2014/05/31

写真展を足早にクルージングする

皐月の大晦日、夏の陽射しの東京ダウンタウン。
「東京1960」と「HARRY CALLAHAN」と
2つの写真展を足早にクルージングしてきた。

◎「東京1960」

薗部澄 長野重一 田沼武能 熊切圭介 木村恵一、
──時代を活写した5人の写真家の作品を通して、
1960年代の東京の姿を蘇えらせたもので、
あの時代の熱気がモノクロ画面から立ち昇ってくる。

高度成長期時代の真っただ中、
ことに1964年のオリンピック開催に向けて
東京が変貌していく時代の証言であり、
ドキュメンタリーとしての写真の強さが迫ってくる。

























「東京1960」〜6月6日(金) ノエビア銀座ギャラリー
http://gallery.noevir.jp/tokyo1960/
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◎「HARRY CALLAHAN」

写真芸術に偉大な功績を残したことで、
国際的な名声を博するハリー・キャラハン(1912〜1999)。
写真の持つ可能性と自己の感覚が交差する写真には、
きわめてパーソナルな直感と実在感が横溢し、
見る者の意識を皮膚の内面奥深くまで向かわせる。

それは、キャラハンという稀有な写真家の
中心部分へ引きずり込ませる写真的作用なのだが、
人間性の普遍的な希求を包括するもので、
静謐ながらピーンと張った心象景が魂を呼び覚ます。


























「写真展 HARRY CALLAHAN」〜6月8日(日)
リコーイメージングスクエア銀座

http://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/community/squareginza/schedule/event_detail_13.html
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2014/05/29

被災地を詠んだ桜に目が留まり

シンブンガミに載る俳壇・歌壇を、
いつごろからか、よく見るようになった。

せっかく日常に接する紙面に載っているのに、
目を通さないと季節に申し訳ない思いがするからだ。
句のひとつもひねれぬ朴念仁のくせに、である。

この時季は、花を詠んだものに目が留まるが、
とりわけ東北の被災地の桜がそうだ。
2011年から3年間、被災地の桜を見てきたのに、
今年に行けなかったのが余計にそうさせる。

手元に残っている朝日新聞の紙面から、
ちょっと気になったものを載せさせていただく。(敬称略)

・福島に帰る帰れぬ櫻かな (長岡京市・寺嶋三郎)

・全村避難の村の桜はさみしかろ
 しいんと咲いてしいんと散って (福島市・美原凍子)

・はらはらと浪江の土手に舞う桜
 しばし忘れる胸の線量計 (南相馬市・池田実)

・除染する熊手の上に降る花弁
 愛でられず散る浪江の桜 (南相馬市・池田実)

後半の2首は、福島県浪江町で除染にあたった作業員に
よるもので、27日付の朝日新聞夕刊にも大きく
取り上げられたので、目に留まった方も少なくないだろう。

*掲出写真は、2011年春に撮影したものです。















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2014/05/26

スピリッツとジャズと文庫本

うつつを抜かした"桜股旅"から、
日常に戻るには、音とアルコール消毒がいる。

あのコルトレーンが来日した時に、
お忍びで立ち寄ったという伝説が残っている
今では希少なジャズ喫茶「マイルス」。

弛緩した身体をシャバに戻すのに恰好の空間で、
ジャズに素人の下僕にも居心地よく、
片道1時間半の道のりもいとわず歩を向ける。

ヴォッカ・ソーダをダブルで体内に放り込み、
マル・ウォルドロンを聴きながら、
かねて親しんだ一冊の文庫本に目を泳がす。

『言の葉』茨木のり子集 3 (ちくま文庫)。
代表作である「倚(よ)りかからず」も
収録されていて、背筋がピンとする一冊だ。





 


































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2014/05/13

桜路の止まり木「杉の子」@函館

コスモポリタン・シティー函館を
函館、いやHAKODA~TEたらしめている店に、
「杉の子」という舶来居酒屋バーがある。

昭和が薫るボヘミアンな佇まいがお気に入りで、
私は密かに"桜の子"と呼んでは、
この十数年来、桜行路などで函館を訪れる度に、
止まり木に身を寄させていただいている。

その日の撮影の〆となる函館公園界隈の
夜桜を撮り終えて、谷地頭(やちがしら)温泉なる
市営の温泉公衆浴場で一日の汗を流して、
あとは市電に飛び乗れば、ほどなく函館駅前。
柳小路「杉の子」のドアをそっと開ける。

特筆すべきは洋酒の品揃えとカクテルの美味さ。
米国・桑港(サンフランシスコ)一世を風靡した
「The Ben Jonson」のバーテンダーだった私は、
日本一のBAR!と言っては、函館はおろか
北海道を訪ねる友人らにこっそり教えている。
美味カクテルとリーズナブルな価格と、
アットホームな雰囲気。ご託は何にもいらない。

昭和33年以来幾星霜、オーナーであられた
マスター氏ご夫妻と...今では麗しいお嬢さんと
凜々しいバーテンダーが率いる「杉の子」。
この類い稀な空間にたゆとう時間の心地よさは
名状しがたく、あますところ特別のものだ。

もし、風采の上がらないイデタチで、
ルビー色のビアジョッキかラムハイ(200円!)を傾けて、
手にパイプもくもくの謎の輩を見かけたら、
ぜ~ひ、「ピートマン!」とお声かけください(笑)
★函館・杉の子
http://www5d.biglobe.ne.jp/~suginoko/



















追記:
「杉の子」が少なからず支援するシネマ作品に触れておきたい。
村上春樹や中上健次と並び評されながら、不遇のまま
自死した函館市出身の作家・佐藤泰志の著作が、近年とみに
脚光を浴び再版・文庫化、また原作が映画化されている。
「海炭市叙景」と「そこのみにて光輝く」の2作品で、
現在は後者の「そこのみにて光輝く」が全国公開中!
時代が希求する命の輝きが、函館エリアを舞台に展開される。















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2014/05/12

さようならJR江差線...そして松前線

「江差の五月は江戸にもない」の名言のごとく、
江戸時代のニシン漁の最盛期には"江戸をもしのぐ繁栄"で
全国に知られてきた、北海道檜山郡江差町。

昨5月11日、函館と江差を結ぶJR江差線のうち、
木古内ー江差間(42.1km)が廃線となった。
鉄道ファンで大混雑したラストランの11日を避けて、
3日前に始発列車で往復、寂寥感に身が包まれる。

木古内駅には「北海道新幹線2015年度開業」の大ポスターと
ノボリが派手にはためいて、傍らの狭いホームで
上・下江差線が「特急スーパー白鳥」の通過待ちで佇んでいる。

2年後に新幹線が本州から函館まで延伸されるが、
新幹線のレールとともに、住民の足であるローカル線が
またひとつ消えていく。いつものお決まりの構図だ。
跋扈する新幹線&族と、代替えバスにしか乗れない地域住民。
この国の二極化はさらに拍車がかかっていく。
かく言う私はどちらの旗は持つかは...自明である。

北海道内の廃線は06年の第三セクター「ふるさと銀河線」
(北見ー池田)以来だが、この路線とともに
江差線も桜行脚のアシとして少なからずお世話になった。
大好物のニシンは高くてありつけなかったのだが...。

「江差線」を見送りながら、歴史の不条理で1988年に
消えていった「JR松前線」のことがずっと気になっており、
関連サイトを見ると、江差線以上の愛惜の様子が
ありありと...あの頃の道内を知らなかった自分が悔やまれる。

ご興味のある方は———
★動画「さよなら松前線 最後の列車が走る」
https://www.youtube.com/watch?v=gLgqvuLbeOU






























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2014/05/11

"桜物件"もまた楽しからずや②[私的アーカイブ]

列島の津々浦々を久しく歩いてきて、
"桜物件"で目を射とめるのは
風土の色が濃く出ているものである。

ネット万能と思える時代の中で、
桜は、抱え持つ歴史の堆積だろうか、
デジタル情報・思考からでは
決して捉えられないアナログ情況こそが、
桜股旅人のこころの琴線に刺さる。

そこ在るのは、先人から継続された
桜への思いであって、今を生きる人間が、
クリックひとつで得られる桜世界とは、
まるで様相を異にするものなのだ。

写真①
駐車場の案内看板ひとつをとっても、
"日本三大桜"と称される桜を
ふた昔前に初参観した時と何ら変わらなく、
桜の字からして、天下一品の出来映え。
(4/15投稿・悠久の二千年とは「山高神代桜」)

写真②
お腹ペコペコで目に留まった店先の
無造作な「造花」に宿る風情は、
美味満タンの午餐を出す店主のこころ。
(4/27投稿「日光の桜、結構なり」)

写真③④
あの「冬ソナ」をモチーフにする
パチンコ店の入口のドアを
ノスタルジックに彩る花びらの意匠美。
そして、場末の横丁にぽつねんと
ある酒処「さくら」のサインの姿形には、
女将さんの人肌と人情が滲み出る。
(弘前・歓楽街)

写真⑤⑥
他方、かつての賑わいを再び、と
年一度の桜シーズンに賭けて、
さんざめく演出をする商魂の光と影。
(函館・ひかりの屋台「大門横丁」)

どこかとり澄ました都会の桜と違って、
日本人の心性が顕著に表出する
列島のそこかしこに桜の"聖と俗"を見る。




















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*さまざまなメディアに「桜」関連を掲出してきましたが、
現在、以下の書籍、雑誌でお手にとってご覧いただけます。


























『にっぽんお宝桜撮影行』(枻文庫)

























『北海道さくら旅』(北海道新聞社)






















『別HO』桜増刊5月号 (ぶらんとマガジン社)
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"桜物件"もまた楽しからずや① [私的アーカイブ]

桜、さくら、サクラ、櫻、SAKURA...
ニッポンの隅々まであまねく浸透している、
春の風物詩を撮ってきておよそ20年。

被写体は「桜」の風姿だけにとどまらず、
桜にまつわるものみなに拡散する。
桜祭りの出店・露店から~桜マンホールまで、
多種多様な"桜物件"とでもいうもので、
「桜」撮影の合間を縫ってカメラに収める。

桜の風姿がそうであるように、
"桜物件"にも、お国柄とでもいうべき
風土の薫りや、土地の匂いが
染み付いていると、もうぞっこんで、
スッポンのように離れがたくなる。

投稿写真は、今年、2014年の桜股旅で
なかんずく出合った露店たちである。
多くは出し抜けに目に飛び込んできたのだが、
中には、訪ねるたびに撮る店もあって、
看板のオモテ・ウラを撮らせていただいたり。

ときに、列島の桜だより「桜前線」は、
先ごろ北海道の最東端・根室に届いた。
現在では、歯舞・珸瑶瑁(ごようまい)集落から
納沙布岬あたりに春を呼んでいるだろうか。

*写真上から、函館公園(2点)、松前公園(2点)、
弘前公園、青葉ヶ丘公園、松前町/Pete Kobayashi










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*さまざまなメディアに「桜」関連を掲出してきましたが、
現在、以下の書籍、雑誌でお手にとってご覧いただけます。


























『にっぽんお宝桜撮影行』(枻文庫)


























『北海道さくら旅』(北海道新聞社)


























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